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こまどり日記

宮本輝著 「錦繍」

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2007/11/11() 曇り

久し振りに心に沁みる本を読んだ。
まさに今の紅葉の季節である「錦繍」という題名の小説だった。

粗筋は学生時代に出会って恋をしてシアワセな結婚をした夫婦。が、夫は心中事件にまきこまれ相手の女性は死ぬが夫は生き残る。
愛しながらも余儀なく離婚をする。
その後二人は十年の歳月を経てから偶然再会をする。それから二人の往復書簡がはじまる。

冒頭の一節で、
「前略 蔵王のダリア館から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本とうに想像すらできないことでした」
と、濁音の言葉でリズム感のある 始まりは何かを暗示させているのかもしれない。
冒頭には 蔵王の錦絵のような美しい光景も描写されている。

妻は資産家の父のもとで お嬢さん育ちでわがままであったのかも知れない。
初めの頃は心中事件を起こした夫を恨んでいたが、書簡集のやりとりのなかで
深い愛情があったことに気がついていく。
それにあわせて人生観も素晴らしい女性に成長していく様が錦繍のように美しかった。

この小説のテーマは沢山あるが一番重いのは
「生と死」、「命」、「再生」ではないかと思う。
この女性に「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかもしれない」と、
語らせている。
私は、若い頃にこの本を読んでもそれほど感動はしなかっただろう。
色々な人生経験を経てきたおかげで 切ないほど心に響く。
だから、年令を重ねるって なんと素晴らしいことだろう、と思った。

Commented by 鶴子 at 2007-11-11 23:36 x
【年令を重ねるって なんと素晴らしいことだろう、と思った。】いいことばですね。
年齢が皺となって刻み込まれるのです。 私も若い時には見えなかったものがようやく見えてきました。 近くのものより遠くのものがよく見えるのです。 あれっ、これって単なる老眼?
それは、冗談として・・・加齢はマイナスのイメージがありますが、年輪となって一回りも二回りも大きくなるのですから、まんざら悪くもないですね。
Commented by 29歳 at 2007-11-12 21:19 x
29歳にはまだ難しそうですねえ
もうすこし年輪を重ねたら読んでます。
さて先日ここに書きました「氷点」
下巻を買って来て真剣に読み進めていましたら
下巻を4分の3過ぎても陽子が自殺しない・・・・。
あれれ?と思って一気に下巻を読み終えたら
なんと 続氷点 上巻 下巻 へ続くでした。
(°°;) (○`ε´○)
最初から氷点1巻~4巻として下さればいいものを
(`へ´)
で今日古本屋で続氷点 上下巻を210円で買って来ました。
by komadori2s | 2007-11-11 12:29 | 読書 | Comments(2)